Star Reclaimer

デモンエクスマキナ 星の解放者

第2章−5

[自室:オービタルベース内]
「今回のオーダー結果を受け、報酬が支払われました」
「表示してくれ」
 HDIに、オーダーでの戦績と報酬が表示される。思っていたよりも報酬が多い。が、死にかけた割には少ない。
「なあ、これっていつもこうなのか?」
「“こう”とは?」
「あーっとだな。任務追加の件は承認したが、報酬に関しては向こうの言いなりだったわけだ――」
「つまり、報酬金額に関してあなたの言い分を申請、または交渉したいということですね」
「その通り!」
「それはお勧めしません。過去に成立した事例はほとんどなく、共同体のあなたへの印象を考えるとあまり良い行動とは思えません」
「ふぅ……」
 そりゃそうだろうな。俺たちの代わりは幾らでもいる。アウターは確実に数を増しているが、マイノリティであることに変わりは無い。
「これからのオーダーのためにも必要な情報があればお伝えしますが、何かご質問はありますか?」
「まっ、特には無いが……そうだな、イモータルは結局なんなんだ? 奴らはどれだけいるんだ?」
「総数は把握出来ていません。幾つかの工場が彼らに占拠、改造され、彼ら自身で彼らを生み出しているからです。また彼らには個体毎の個性、言語が備っているだけでなく、群体としての記憶を持つ新しい知的生命体というのが研究者の見解です」
「知的生命体? 群体としての記憶?」
「はい。一部の菌類、昆虫類などに見受けられる特質です。個体がそれぞれ経験、また得た知識を群れに伝えることで群れ全体が共通の記憶を得るというものです」
「ということは、下手をすればどんどん強くなるってことじゃないのか?」
「その通りです。強化速度は個体差や地域差があり、正確な速度は算出出来ていませんが、やり方こそ違え、人類も同じだと言えます」
「人類も同じ?」
「そうです。人類も情報や経験を遺伝子や教育で伝え、現在よりも未来において強くなる種と言えます。研究者たちの知的生命体の定義は“生存のために経験や知識を種へ伝え、残せること"と定義しています」
「じゃあ、これは種の生存を賭けた戦争ってわけだ」
「そう捉えている人たちもいます。もちろん菌や昆虫類と同じだとして共生を試みる人々も少数ですが存在します」
「ああ、あいつらか……」
 壁の外で見た平和論者たち。全てが手を取り合って生きていくなんていう夢物語を語る大馬鹿者たち。イモータルなんていうわけの分からない物と手を取り合えるなら、俺たちアウターが社会から弾き出さるはずが無い。むしろイモータルの方が好ましい。アウターだろうと、そうでなかろうと人類を敵として排除、殲滅を試みている。平等に、だ。

 HDIに、新しいオーダー依頼が通知される。
「新しいオーダーのようですが、確認しますか?」
「頼む」
「ブリーフィング設定時刻は、現時点となっており、あなたへ参加を促しています」
「俺に?」
「はい」
 思い当たる節は無いが、ご指名とあれば損な話でも無いだろう。
「繋いでくれ」
 HDI上にオービタルのロゴがくるくると踊る。画面が切り替わる瞬間、改めて下着姿では無いことを確認し、少しだけ安心する。
「――オーダーブリーフィングを開始。
このオーダーはスカイユニオンからの依頼になります。A+級イモータルの出現を受けて、スカイユニオンではこれまでイモータルの侵攻が認められなかったスカイユニオン支配域に隣接する中立区域について改めて調査する必要があると判断しました」

「巨人の姿をしたイモータルか……ギガント、神話に登場する巨人族。最高神の男性器から滴り落ちた血によって生まれし種。さしずめ、我らは手に雷を持ちし神と言ったところか」
 HDI上に構築された画面に重なるように、男が二人と少年が映し出される。少年は見たことがある気もするが、思い出せない。だが、二人の男たちのことは知っている。知っているも何も壁の外で絶大な人気を誇る解放旅団“SHELL”と“鋼鉄の騎士”のセイヴィアーと、ゾアだ。
 SHELLは貴族、この時代に貴族というのはおかしいがいわゆる高貴な血というやつだ。彼が当主を務めるヴァランタイン家は何世代にも渡って築き上げた財力と人脈、多くの企業を傘下に持ち、特に軍事利権に公然とした影響力を有している。その当主が何故、傭兵なんかをやっているのか? 様々な憶測やゴシップが飛び交い、本当のところは分からない。表立って言われているのは“貴族である者が人類のための戦いに模範を示す”というものだ。彼らの影響力もあるのだろうが、オービタルや各共同体はこれを世の中への模範として取り上げ、称賛することでこの戦いを人類にとって必要なことだとアピールしている。
 片や、鋼鉄の騎士は二人だけの解放旅団。二人だけで団というのもおかしな話な気がするが、兄弟二人で戦い続ける孤高のヒーローたち。たった二人にも関わらず、その戦力は並みいる旅団にひけをとらない。そして二人のルックスの良さもこれまたトップクラスときており、女性のファンが全旅団中で最も多い。さらに気前の良さと面倒見の良さから、彼らを慕う傭兵たちも多いと聞く。正直、同業者として思うのは「やってらんねぇ」だ。
「――詩人だな。ところで、君が遭遇した噂のルーキーだろ? どんな奴だった?」
 ルーキー? 俺のことか!? 考え事をしていたせいで全く聞いていなかった……。
「えーっと、どうかな。すぐ壊れちまったからな」
 嘘は言っていない。倒したのは自分ではないが……。
「ほう。敵が強大であればあるほど、絶対的正義である我らの力を執行するのに、加減する必要がないというものだが。」
「ははは! 言うじゃないかルーキー。期待しているよ。そちらの王子様には残念かもね」
「うん? 王子様と言うのは私の事か?」
「他にいないだろ」
「我らヴァランタイン一族は正確には王族ではない。しかし今の時代、君たちにとっては同じようなものなのかも知れんな……いいだろう、そう呼ぶのを許そう」
「そりゃどうも」
 ゾアが肩をすくめる。やれやれという表情を隠そうともしない。しかし、その気持ちは初対面の自分にも良く分かる。どうやら、世の中に流布している噂の何割かは本当だったってことだ。
「いずれにせよ、イモータルは全て駆逐する。彼らは人類によって淘汰されるべき種だ」
「あの、質問いいですか」
「ああっ、イノセンスの真面目君か。いたんだな」
 イノセンス? 聞いたことがある気もするが……。
「最初からいましたよ! 忘れないで欲しいですね。それに、うちの隊ではこういう役目は僕の仕事ですからね」
「ご質問をどうぞ」
「そうだった。その巨人? ギガントだかA+だかですけど、現時点での記録によれば強さが図抜けていることが分かっているだけで、他は何も分かっていない。もし遭遇したら交戦していいのか、情報を集めればいいのか、どうすれば?」
「確かに、前回の遭遇戦で当該区域の広域レーダーと通信用の中継塔が破壊されてしまったため、情報収集は戦闘記録から取得した物のみとなっています。ただ、前回の遭遇時にバレットワークスによる掃討が行われており、現在は付近の領域に同型のイモータルが潜んでいる可能性は低いと、スカイユニオンは考えています」
「だったら、もっとランクが低い人たちでも良かったと思うんだけど、このメンバーってことは、可能性はゼロではないと?」
「その通りです。ゼロでは無い限り、万全を期したいというのがオービタルの意向です。そのため、皆さんが参加するメリットとして、スカイユニオンの特殊兵装が貸与されます。今回のオーダーは、その兵器の試験運用という意味もあります」
「とはいえ、貸与ってのがね。もう一声欲しいところだな。僕たちは命を懸けてるんだぜ」
「今回のオーダーは指定された個人・旅団へ されています。交渉の余地は十分にあると考えます。少々お待ちください」
 こんなこともあるのかと思う。彼らのランクとオービタルでの扱いもあるのだろうが、今後は契約事項外も検討の余地ありだ。
「報酬の引き上げとはいじましいな、ヒーロー。貴様の兄なら、そのようなことは言うまい」
「それは認める。僕と違って兄貴は本物のヒーローだからな。どんな敵だって自分の力で打ち破れる。ただ僕は兄貴とはやり方が違うんでね。強い武器があるなら遠慮なく使わせてもらう」
「感心だな。イモータルを倒すのに必要なものは全て使え。神の子である我らは、彼ら被造物に手段を選ぶ必要は無い。我らが正義であるが故、な」
「あーあ、お金持ちはいいですよね。お金の力でアーセナルすらオーダーメイド。こっちはみんなで、食費のために頑張ってるって言うのに。王子様には引っ込んでいてもらえると助かるんですけど、ダメですか?」
「君たちの健闘を祈ろう。君たちが正義の執行者に足る戦いをするなら、私が動く必要は無い。その時は、私の分の報酬は貴兄らで山分けしたまえ」
「やった! 約束ですよ?」
 ピピッと、通知音が鳴る。
「スカイユニオンとの交渉が終わりました。今後の運用データを供出する限り、無期限の貸与、また報酬を二〇%増額するとするとのことです」
「いんじゃないか。どうせ僕らの戦闘記録は全部録られているわけだし。その条件でオーダーを受ける。で、王子様はどうする?」
「我らの責務。断る理由はない」
「イノセンスも受けます」
「君はどうする?」
 どうするもこうするも、こっちは傭兵成り立てで余裕なんて無い。それにこの面子なら、何かあっても生き延びられそうだ。
「もちろん、やるさ」
「決まりだな」
「オーダーの契約を確認しました。開始時刻までに装備を完了してください。各ハンガーにはすでに通達を完了。装備の搬送を開始しています。なお、途中で契約破棄をした場合には、貸与される兵装は回収されます」
「分かってるって」
「貴兄らの健闘を期待する」
「じゃあ、また後で!」

    

*  *  *


[ハンガー:オービタルベース内]
「上手いことやったようだな」
「すごいぜ、これ! 新米の分際で最新の装備を手に入れるなんて、どうやったんだ?」
 新米、新人、ルーキー、何故名前は呼ばれないのか、今は理解できる。A+のイモータルと対峙した時、自分だけなら確実に死んでいた。つまり下手をすれば明日と言わず、ここはいつでも命を落とすような場所だ。彼らが名前を覚える前に無数の新人が、命を落としていったのだろう。なら、彼らに名を呼んでもらうには生き延びるしか無いってことだ。
「俺じゃない。一緒にいた奴がやり手でね」
「そりゃ、いい奴がいたもんだ。ザック、説明してやれ」
「もちろん! いいかこれはスカイユニオンの“アズダルコシリーズ”の最新型。通称サンダーバード。こいつから目標に電波を照射し、誘導するアクティブ方式だ。他と比べて、発射後に操作など一切必要としないファイア・アンド・フォーゲット性能は、どんなアホにでも扱えるって代物だ。しかもこいつは、同時に十二のターゲットをロック。同時に攻撃できるマイクロミサイルを搭載している――」
「――すまん、よく分からない」
「あーえーっとだな。ミサイルを、同時に、たくさん、発射する。分かったか?」
「それぐらいは分かるさ」
「ザック、こいつは新米な上にド素人だ。いいか、こいつは複数の敵を同時に攻撃出来る。その上自動で追尾するから、発射した後は何も考えんでもいい。ただし、撃った後はミサイルがどういう軌道で飛ぶかの予測はできん。敵の動き次第だ。だから、仲間がいる場合は、慎重に撃て」
「分かった」
「さすが、親爺さん」
「装備オタクなのはいいが、お前はもう少し説明の仕方を考えろ。大体傭兵ってのは何も理解していないバカたれと相場が決まっとる」
「そうっすね。いやー、この武器の良さ分かんねーだろうなあ」
 えらい言われようだが、装備のことをいま一つ理解していないのは確かだ。どうにも、マニュアルを読む気が起きない。それに、アーセナルは装備してしまえば体の動く通りに反応してくれる。最初こそ、緊張したが慣れてしまうと普通になってしまう。
「試していいか?」
「もちろんだ」

 胸部に開いたアウター収納スペースへ滑り込み、HDI上から“模擬戦闘モード"を呼び出す。簡単に言えば仮想空間での戦闘(Virtual Mock Battle)を行うモードだ。
「いいね」
 単純に“いいね”だ。肩に装備されたミサイルは、ザックの言うとおり、アホでも使える。ライフルも盾も敵に向けて“使わないと”いけないが、こいつはいい。目線の先で脳が敵と認識した敵を自動でロック。発射を思考するだけで発射してくれる。
 HDIが広がり、フォーが現れる。形を変え続ける幾何学模様だ。見続けていると、引き込まれるような不思議な気持ちになる。フォーの音声は女性がベースのようだ。声が女性なら、姿形に性別を与えなかったのは何か理由でもあるのだろうか――。
「オーダー開始時刻まであと三十分です」
「おっと、そうだな」
 装備が揃っていることを確認する。十分だ。前回の戦闘から短い時間だったが、大きく傷んだ箇所も修復されている。細かい傷はアーセナルの自動修復システムで時間が経てば修復されるはずだ。VMBを抜け、アウタースペースから顔を出し二人に伝える。
「完璧だ。ありがとう」
「当たり前だ、バカたれが!」
「ようやく分かってくれちゃった? 俺たちすごいんだぜ」
 スペース内に戻り、装備を開始。自分の感覚が拡大し、視界が同期される。
「出撃を開始する」
「帰ってきたらどんなだったか、教えてくれよ!」
「分かってるって」
 ザックに手を挙げて返事を返し、出撃シーケンスを開始する。ドラムドライブ上に移動、そのまま射出エリアまで移動する。

     

*  *  *


[スカイユニオン市街隣接地域/洞窟:オーヴァル]
「――作戦区域に到達。
射出シーケンスに入ります。五秒前、四、三、二――射出します」

 ブースターを噴かし、合流ポイントを目指す。
「こんなところがあるんだな」
 建物や岩、あらゆる物が破壊された際に細かい塵と化し、それが高熱で溶かされ、ガラス化している。過去は都市だったのだろう、それが溶けて混じりあい、地上、地下で洞窟のように複雑な地形を作りだしている。
「ここだけじゃないけどな」
 いつの間にか、横に二機の<アーセナル>が並走して飛んでいた。当たり前だが、自分のアーセナルよりはるかに良い装備をしている。シルバーの輝きを放つ機体は“騎士”そのものだ。左右で対をなすようにアーマーが装備されている。だが、どこかがおかしい。外装の細かい部分が様々なタイプから集めたように、ちぐはぐだ。気のせいか?
「お前が噂のセイリオス君だな。大層な名前をつけたもんだ、ルーキー君。その機体の様子じゃ、童貞は捨てたみたいだな。ハハハ。俺は鋼鉄の騎士のデヴァだ。よろしくな」
 HDIにクルーカットに整った顔立ちの男が映し出される。バウンティランキング、キルスコア、傭兵の強さを示すランキング上位に必ずその名を刻んでいるにしては、どこかお茶目というか陽気で気さくさを感じる。しかし、自分で付けたコールサインだが、他人に言われると恥ずかしくなる……。
「兄貴、ちゃかすなよ。君とはブリーフィングで会ったよな。王子様とイノセンスのメガネ君は別エリアの担当だ。残念かも知れないが、生きていればまた組むこともある」
「王子様?あいつまだ生きてるのか。いつか、あのお高くとまった顔面にかましてやらねぇとだな」
「あいつ、僕たちの言ったことなんて全く覚えてないし、殴っても気付かないかもね」
「ちげぇねぇ。で、ルーキーはどうだ? ここの感想は?」
 感想と言われても困るが、強いて言うなら……。
「同じ地獄なら、こっちの方がずっといい」
「ハハハハハ。同じ地獄なら、か」
「それは言えてるね。自由が無い地獄なら自由のある地獄の方がいい」
「まったくだ。それはそうと、王子様は今回も高見の見物か?」
「だろうね」
「高見の見物? 何もしないってことか?」
 HDIに映る二人が同時に肩をすくめる。
「知っての通り、僕たち傭兵はしがないその日暮らし。で、彼らは正真正銘の大金持ち、由緒正しき……」
「貴族様ってやつさ。俺たちが義務を負うのならば、貴族はもっと金を出す」
「兄貴、それを言うなら庶民が義務を負うのならば、貴族はより多くの義務を負わなければ ならない、だよ」
「まっ、何だろうと、オーヴァルの中ではただの傭兵だ。だが、ご大層な信念とやらで自分の動きたい時にしか動かないし戦わない。一緒に組むには最悪だ。だが、腹立たしいことに奴の傭兵としての能力は優秀だ」
「残念だけど、事実だ。兄貴と戦ったら、いい勝負だろうね」
「お前だって捨てたもんじゃない。俺とお前の二人で鋼鉄の騎士なんだ。それを忘れるなよ」
「嬉しいこと言ってくれるね」
 二人の言っていることは分かる。セイヴィアーのキルスコアは極端に低いにも関わらず、バウンティランキングは常に上位だ。壁の外では財産がらみと言われていたが、実力者二人が認めるほどの腕の持ち主であれば、納得だ。
「それで、あんたたちは?」
「僕たち?」
「それはいい質問だ。俺たちは“正義のヒーロー”ってやつさ」
 ゾアが笑みをたたえ、ウィンクをする。二人が女性に人気が出るわけが分かる。二人の雰囲気に、俺も自然に笑ってしまっている。
「他にも傭兵団があるけど、自分の目で確かめるのが一番早い。こんな地獄に飛び込んでくる連中だから、珍種に希少種、見てて飽きない変わり種だらけ。下手な動物園よりも盛りだくさんだ」
「だが、それぞれ腹づもりは違う。誰と組むかは自分の目で確かめて自分で決めることだ」
「つまるところ、僕たち傭兵は稼いで“生き残れ”って話さ」
「仕事だぞ」
 洞窟の壁、床を覆うようにイモータルの群れが、虫の群れがびっしりと体を寄せ合っている。こちらを認めたのだろう、赤い光点が一斉に光始める。いい機会だ、早速ミサイルを使わせてもらおう。
「これでも食らえ!」
 派手に発射されるミサイルの軌跡を待つが、発射はおろかロックオンすらしない。そもそも、HDIに反応が……無い!
「フォー、どうなってる?」
「敵の種別はタイプC+。こちらからのロックオン信号を拡散、無効化する特殊タイプです」
「つまり?」
「専用の装備を組み込んでいない限り、ロックしての自動攻撃は不可能です」
「嘘だろ!?」
「ハハハハ。ルーキーの装備じゃあ、まだそんなもんだろうな。そう言う俺も、装備を間違えちまった」
「まったく、だから準備をちゃんとしたのかって聞いたのに」
「すまん、すまん」
 ミサイルを派手に発射し、群れを倒していく弟に対し、デヴァはライフルで1匹ずつ正確に倒していく。
(負けてたまるか!)
 一匹ずつ、慣れないまでも倒していく。三発に一発という精度だが、今の俺にはこれが精一杯だ。掃討しながら奥へと進んでいく。洞窟は次第に上へと向かい、広間へ出る。広間には、巨大な柱が天へと延び、柱に無数のイモータルが群がっている。
「食糧庫か」
「食糧庫?」
「彼らイモータルが造った“エネルギージェネレーター”です」
「僕たち傭兵は“食糧庫”って呼んでるけどね」
「フォー、クラスは?」
「クラスⅣ。推計の爆発範囲は半径三キロです」
「なら、やることは一つだな」
(やること? 一つ?)
「フォー、探索範囲はこれで十分だと思うがどうだ?」
「十分です。別エリアからもA+の痕跡は発見されていません」
「ルーキー、かっ飛ばすぜ」
「何を……」
 デヴァが背中に装備していたバズーカを連射し、イモータルごとエネルギージェネレーターの外壁を破壊する。こちらを認識した雲霞のごとき群れが狂ったように襲い掛かってくるが、それよりも速くゾアの放った銃弾が群れの間を抜け、破壊された外壁の中、供給装置の核を貫く。
「走れ!」
「え?」
「時間が無いぞ」
 来た道へ飛び去る二人と、サーマルセンサーへ表示された熱量を見て気づく。ヤバい! エネルギージェネレーターを爆破させ、一気に全滅させる気だ!
「くそっ!」
 全速力で離脱する。息が荒くなり、自分の体力が消耗していくのが分かる。まったく何てことしやがる! 後ろから熱波が迫ってくる。
(見えた!)
洞窟を抜け、上昇する。眼下で地割れが起こり、洞窟からは熱波と破壊された瓦礫が噴き出してくる。
「無事、生還おめでとう」
 見上げた先に、先に脱出を果たしていた二機のアーセナルが待機している。
「無事って! 死んでたかも知れないんだぞ!」
「まあそう怒るなよ。そっちの装備も考えて大丈夫だって判断したつもりだ」
「そうだとしても、先に説明くらいしろよ! どこが正義のヒーローだよ!」
「ハハハ。正義のヒーローは常に勝たなきゃならんからな」
「悪かったね。君なら大丈夫だって思ったし、何よりあの数だ。一気に殺れるなら、活かさない手はないからな」
 二人の態度からすると、少なくとも俺を殺すつもりでやったんじゃあなさそうだ。悔しいがロックオンすら出来ない自分と一緒にあの数を倒すよりも、ジェネレーターを破壊して殲滅する方がベストだったのは確かだ。だとしても説明無しでやるか、普通?
「しかし結局、例のデカブツは出なかったか。俺の彼女が欲求不満だそうだ」
「ま、でもいい運動にはなっただろう?」
「まあな」
「フォー、帰還シーケンスを」
「承知しました。帰還シーケンスを開始します」
「ルーキー、悪かったな」
「君は筋がいい。また会えそうだ。生き残れよ」
 こちらの返事を待つことなく、二人が飛び去っていく。“筋がいい”か、おだてられただけかもしれないが、気分は悪く無い。
「帰還しますか?」
「もちろんだ。さすがに疲れた」
「お疲れ様。それでは、帰還シーケンスを実行します」

     
――――つづく

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