Star Reclaimer

デモンエクスマキナ 星の解放者

第4章−7

[ゼン支配領域バレンフェムト精製施設:オーヴァル]
「妙なことになっちまったな」
「まったくだ」
 三機小隊。HDI上にはエンプレス、ジョニー、セイリオスの姿が見える。
「フォー、お前は大丈夫なんだろうな?」
「大丈夫という意味の定義によります」
「フォーは大丈夫よ」
 エンプレスが指を立てて、頭を叩く。
「イモータルとの通信回線、接続は私達が使っているものと同じ。会話としての回線は使えても、本体に侵入することは出来ないわ」
「大尉が言うなら、そうなんだろうな」
「はい。私はイモータルが侵入出来ないように設計されています」
「だとさ。ジョニー、お前の方が俺より詳しいだろ?」
「そりゃそうだけどさ、不安だろ? これじゃさ」
 ジョニーが親指を立て、外側に振る。
 空中を航行するアーセナル三機の横に二十機の戦闘機型のイモータル、シールドを前面に展開出来るタイプが随伴、飛行している。グリーフたちと見分けをつけるため、イモータルたちは白にペイントされ、友軍であることを示すエンブレムと識別信号を発信している。セイリオスたちも片方の肩が白くペイントされ、部隊エンブレムではなく”解放旅団同盟、allies of reclaimers”を示す、A・O・Rの略名が赤字で記載されたエンブレムをつけている。
「で、確かなんですよね?」
「一〇〇%とは言えないわ。あくまで情報の中で得た一つの情報。そして、イモータルの情報を足した結果だからね。でも本当なら、先に手に入れた方が得なのは確かよ」
「そりゃそうだけどさ、なんかこう、なあ」
 ジョニーが俺に同意を求める。気持ちは分かる。横にいる奴らは元敵だし、破壊、いや殺してきた相手だ。それが今日から友軍です、はい分かりましたとは簡単には思えない。いつ攻撃されるかと、嫌な汗をかいているのが分かる。
「エンプレスの情報が間違っていたとしても、こいつらに慣れるにはいんじゃないのか?」
「けどさ——」
「まったく、いつまでも。男らしくしな!」
「男らしく了解です! フォー、あとどれくらいだ?」
「現在の航行速度なら四分二十秒です」
「さて、何が出てくるか……」
 会議から帰ってきたクリムゾンから他旅団、そしてイモータルたちとの共闘、解放旅団同盟の結成が告げられた。同盟の結成は予期していたものだった。だが、イモータルとの共闘までは予期できるはずも無く、混乱はあったがグリーフの戦力を考えれば、受け入れるしか無い選択肢だった。
 作戦行動が立案される中、優先して二つの作戦行動が決定した。
 一つ。オービタル、旅団エリアの隔離と防衛強化。これにはバレットワークスの大部分と不死隊があたっている。
 一つ。戦力強化のための兵器の入手。これには鋼鉄の騎士、西の七人(最早、七人は敵味方に分かれ、七人と呼んでいいかは分からないが)が任務に当たっている。デヴァが言うには
「でかい相手に喧嘩で勝つなら、急所を狙って速攻で仕留めろ」らしい。
これには俺も賛成だ。もちろん、旅団同盟の全員が賛成していた。流石に分かってる。そして、そのための武器に心当たりがあるらしい。
 SHELL、正確にはセイヴィアーだが、政治家、企業の総帥、様々な顔を持つ貴族様らしくオービタルの組織、解放旅団、様々な命令、指揮系統を解放旅団同盟の下に統合している。アーセナルを装備した奴しか知らない俺たちにとって、まったく驚くことだった。
 今、俺たちは二つ目、戦力強化のための兵器の入手へと向かっている。眉唾ものだが、傭兵たちの間で都市伝説となっている第五十一格納庫。エンプレスが情報の海を漂っている間に得た情報とイモータルの情報から、バレンフェムト精製施設がそれだという結論に達した。
ゼンの秘密武器製造及び、かつての始まりの十二機のうち現存するゼン機が格納されているという。ハンガーの整備員たち、アーセナルの好事家たちが言うには、ゼン機には他の機体には無い特徴があるらしい。順当に進歩する両共同体の兵器と比較して、他に類を見ない技術が使われているかと思えば、先祖返りした技術が使われている事もあり、一貫性が無い。これはイモータルと同じく最初の機体が自己改良を続ける設計であったこと、それが今でも尚、進化し続けていてその技術を使っているという最早、オカルトめいた話だ。
 だが、その機体の話よりも最新の技術を搭載した兵器が製造されている施設を抑えるという点では調査に値すると判断され、別動隊として作戦行動を命じられた。
「あれね」
 モニターに映し出された映像に見えるのはよくあるフェムト精製施設だ。何の変哲も無い、よくあるタイプだ。
「降下開始。イモータルたちはわたしたちが戻るまで、警戒待機。敵を認めた場合は交戦を許可するが、勝てないと判断した場合は離脱を許可する。自分で判断して」
「了解デス。警戒待機シマス。自己判断ニテ戦闘マタハ退避シマス」
 着地するが何も起きない。共同体の施設に務める大半の人間が逃げ出した後だ、稼働している方がおかしい。精錬されたフェムトを搬入する扉はアーセナルが通れるサイズになっている。これはアーセナルでの運搬も考慮しての事だ。
「開けるわよ」
 扉を開くコードはもちろん入手していない。だが、エンプレスがいれば問題は無い。
 重い音とともに開く——。
「何も無い」
「どういう?」
 扉の中には何も無い。塵一つと言っていい。
「しょうがないさ、こういう事も? エンプレス?」
「わたしじゃない」
 扉が三人の背後で閉じる。
「何だ?」
 暗闇の中、微かな動作音と共に壁に細い隙間が開き、赤い光が放たれる。
「回避!」
 水平に放たれた光を、ブースターを吹かして姿勢を水平に持ち上げる。二人は床に突っ伏している。そして同じ音と共に今度は床に隙間が開く。
「ヤバい!」
 照射され続ける高出力のレーザーが壁になる。
「うぉおおお!」
 レーザーの射出口へ銃弾を撃ち込む。しかし、レーザーに切断され、弾の威力はほとんど無力化される。
「くそ!」
「耐えるんだ!」
 扉の開閉端末へとエンプレスが接続端子を飛ばす。
「急いでくれ!」
 新たなレーザーが部屋の対角線上へ放たれる。
「うわぁあああ!」
「ジョニー!」
 ジョニーのアーセナルの左腕が切断される。
「このままじゃ殺られる! エンプレス!」
「開閉、いやこれか!」
 低い唸りとともにレーザーの射出が収まる。奥の壁が後ろへと下がり通路が現れる。
「大丈夫かい?」
「ジョニー?」
「大丈夫だ。ちょっと待ってくれ」
 ゴトン、と左腕が床へ落ちる。
「この損傷じゃ使い道になんねーし、少しでも軽いほうが良さそうだ」
「軽口が言えるなら、大丈夫だな」
「何かあることはこれで決まりね。ただ……」
「ただ?」
「招かれざる客に対してこの出迎えは分かるけど、本当の客の場合は?」
「侵入者を殺すための罠、通路はダミー?」
「一度外を捜索すべきね」
 ジョニーを挟む形で隊形を組み、外へと戻る。
「周囲を走査する。フォー、共有設定にしてくれ」
「走査モニターを共有設定に変更します」
 ジョニーの走査モニターがHDIに共有表示される。
「うん?」
 舗装されている地表の下、通ってきた場所に反応がある。
「任せな」
 エンプレスが近づく。モニターに映る地面には何度も使用した結果だろう、一角が擦れた痕が残っている。アーセナルに降着ポーズを取らせ、隠されたパネルを跳ね上げる。
「緊急用の手動操作。開けるよ!」
 地面が大きく下へへこみ、左右へと開いていく。中にはハンガーで見慣れたエレベーターがある。アーセナルサイズの搬入口。
「まさかこの歳で宝探しとはね」
「ガキの頃の思い出かい?」
「兄弟がいれば一度はやる遊びさ。ま、本当の宝は無くさないと気づかないんだけどな」
「大人になったじゃないか」
「それなりには経験もあるんすよ。セイリオス、お前も言ってやれ」
「俺は——」
「はいはい、そこまでよ。行くわよ!」
 貨物用エレベーターを操作する。下への重量加速を感じる。開いていたゲートが閉じると同時に、周囲のライトが点灯する。
「おいおい、これ片道じゃねぇよな?」
「内側から開けられることも確認済だよ」
「どこまで潜るんだ?」
「さっき再走査しておいた。そっちにも映ってるだろ?」
 小さくしていた走査結果を拡大する。モニター内に施設の走査結果が映っている。地下ニ〇km。直抗の下に施設が広がっている。アーセナルサイズは三km四方。それ以外は人のサイズだ。
 ゴン。という音とともに重力加速が止まり、目の前に扉が出現する。俺はアーセナルの姿勢を低くし、盾を前に構える。イモータルから譲られた設計図で作られた新型の盾、アキレウス。少々重いが、防御力は抜群だ。
 ジョニーとエンプレスは扉の横に潜む。動体センサーに反応は無い。
「待機」
 扉が開いていく。センサーだけを頼りにするのは危険だ。目視出来ない敵もいるが逆にセンサーに反応しない敵もいる。
「前に出る」
 施設の中は幾つかの似たような扉があり、扉にはそれぞれマーキングが施され、アーセナルで操作が出来るパネルが配置されている。
「ジョニー、こっちのセンサーだと施設の奥までは無理だ。反応はあるか?」
「特になにも……いや待て、一つだけある。これは——」
「遅い!」
 施設へ声が反響する。通信では無く館内放送を使った声だ。
「何だ!?」
「遅すぎるぞ、馬鹿もんが!」
「はぁ!?」
 施設のライトが全て点灯する。部屋の上部、張り出した一室に人影が見える。ズームする。
「誰だ!?」
 禿頭にゴーグル、真っ白な髪は好き勝手な方向へと伸び、かつては真っ白だった作業着は長い間着たままなのだろう。様々な汚れと皺でよれよれだ。
「ようやくきたワシのかわいい子たちの出番が無くなるところじゃろうが」
「何の話だ?」
「はぁ!? お前らこそ何じゃ? 必要だからここへ来たんじゃろうが? ゼン主任兵器開発者カーナ・ヤーゴの子供たちを」
「落ち着いて、わたしたちは——」
「女は黙っとれ!」
 エンプレスが肩をすくめる。まったく話にならない。
「つまり、あれか? あんたはここの兵器開発主任で、持って行って使えってことか?」
「そう言うとるじゃろうが。グリーフの馬鹿のおかげでようやく出番が来たってわけじゃ」
「おい、こいつやばくねーか?」
 ジョニーが通信を小隊接続に切り替える。
「気に入らないね」
「兵器を持ち帰るのが任務だ。くれるって言うなら損は無いだろ?」
「そりゃそうだけどよ」
「他の奴らは?」
 回線を切り替える。
「心血注いで来た成果をほったらかしにして、すぐに逃げよった。まったく、一事が万事よ。そんな奴らが作ったものなど当てにならん。仕事というのはな、普段からの生活、生き方が大事なのよ。それなのに分かってない奴らが多すぎる」
「で、どこにあるんだ?」
「ようやく興味が沸いたか」
「それだけ言うんだ。自信があるんだろ?」
 カーナがニヤリと笑う。
「それ!」
 二つの扉が開く。
 中には完全武装したアーセナルが二機。軽装型だ。
「ほお」
「まじかよ!」
「これって……」
 アーセナルを着ていれば分かる。目の前にあるのはこれまでに見たことが無いほどの完成度を誇っている。装甲の表面がライトの反射を受けて光が屈折し様々な光を放っている。
 一機の背中にはブリッツだろう。ただし、巨大な羽のようなブリッツが並んでいる。両手にはマシンガンと思しき銃を装備し、見たことの無い武器をパイロンに積んでいる。
 一機は狙撃銃と思しき銃を装備しているが、異様に長い。その上、パイロンにも似た二つの銃が並び、用途は不明だが背中には巨大なレドームを装備している。
「どうじゃ?」
 破顔一笑。
「すげー!」
「これって、フェムト精神反応装甲でしょ。完成してたなんて……」
「ほお、女にしては物知りじゃな。そう、ただ一人このワシ、カーナ・ヤーゴが完成させたのよ」
「精神反応装甲?」
「その通り。このアーセナルの装甲は、装着した者の意思に反応してフェムト粒子を凝集、装甲の防御力を上昇させる。ミラージュの原理を応用し、部分的に装甲を瞬時に展開。フェムト量が少なくとも使用可能というわけよ」
「その背中のは?」
「ブリッツの改良型じゃ。従来のブリッツの問題点は小型故に敵を仕留める出力が足りん。こいつは主兵装としての攻撃力を持たせることに成功した。そして攻撃だけではなく、自動で防御陣を形成する。実弾には機能しないが、攻守を兼ね備えた新しい兵器、フレイム。そしてマシンガンはパイロンにある電磁加速器へ接続すれば、連射可能な電磁加速砲として機能する」
「すげーな……」
「もう一機は精神反応装甲に加えて従来のアーセナルでは成し得なかった攻撃力を備えるため、自動での兵装制御を可能にした。装備した三つのバスターライフルは、同時に個別の敵を攻撃可能とし、接続することで同じく電磁加速砲として機能する」
「どうじゃ? すごかろう!」
「まったく、とんでも無いことを考えるわね」
「で、あれは何なんだ?」
「うん?」
「それだ」
 セイリオスの指さす方向。物々しいまでに厳重に閉じられた扉があり”XIII”のマーキングが施されている。
「これは、これはダメじゃ!」
 ついさっきまで意気揚々と自分の作った兵器を説明していた男が、狼狽していた。一体、中には何があるのか。
「さっきから気になってたんだ。封印されているかのようなその感じ。大事な物があるんだよな?」
「言われてみりゃ、確かに。オレも気になる」
「こ、これは……」
 エンプレスが前に出る。
「開けてみれば分かるさ。わたしはこういうのにつくづく、縁があるらしい」
「や、やめろ!」
 施されたシーリングを破壊し、コードを入力する。開く扉の隙間から漏れ出た冷気に空気が反応する。水蒸気の靄の向こうに……。
「影?」
「何?」
「アーセナル?」
「いかぁああん!」
 複数のケーブルと拘束装置に繋がれたアーセナル。精神反応装甲の煌めきはあるが同時に、漏れ出したフェムト粒子がエネルギーとして熱を発している。それで冷やされているのだ。
「これ、これじゃないのか! はじまりの十二機の一機ってのは!」
「そのようだね」
「……それは違う」
「違う?」
「そうだ。最早それは最初とは似ても似つかぬ別の存在だ」
「それはどういう?」
「はじまりの十二機はオーヴァル中心部への侵攻を目的に各共同体が製造した機体じゃ」
 ここまでは聞いたことのある話だ。
「共同体の目的は一つじゃったが、思惑はそれぞれ違っていたようにアーセナルの開発もそれぞれの開発者や企業によって違っておった。最大戦力となるよう、それぞれの機体が装備者に合わせて調整されていた。もちろん、我がゼンが作った十二機のうちの三機も例外では無い。試作という事もあり、それぞれ異なる特性を持っていた。一機は互換性をすべて排除し、変形機構を備えた多目的機。一機はAIを四肢に配し、装備した者の反応を最大化、古来よりの武器"刀”を振るうことに特化した近接戦闘のスペシャリティ。そしてこの機体じゃ」
 カーナの声に怖れが見える。緊張そして不安。
「何故、封印していた?」
「二機は最新の装備を備えたただのアーセナルだった。じゃが、この一機は違っていた」
「違う?」
「そうじゃ。中心部での現象、存在が変容することは報告されていた。だからこの機体には変容への対抗策が施されたのだ」
「変容への対抗策……」
「そう。変容への対抗、進化だ」
「何だ、どういうことだ? じゃあ噂は……」
「全てが変わるなら、自ら変わり続ければいい」
「変わり続ける……」
「目論見は成功した。じゃが、思っても見なかった副作用があったのだ。外部から取り込んだ全てを己の糧として進化する機体。最初は開発者たちの思惑通りじゃった。この機体は中心部でも変容に耐え、帰還した。しかし、進化しすぎたのだ。装備した者はそれに耐えることが出来なかった。精神に変調を来たし、友軍を攻撃した。そして、何度か改修が試みられたが、全て無駄じゃった。進化が改修を凌駕し、テストパイロットは全て狂ってしまった。精神を進化の糧として、喰われてしまったのだ。だから、最早そいつは十二機の一機では無い、進化した十三番目の機体としてここに封印されたのじゃ」
 HDIに外部からの通信サインが点滅する。
「大尉、聞こえるか?」
「少佐? 聞こえるわ」
「そっちはどうだ?」
「戦力になりそうな機体は見つけたわ。手に入れるところよ」
「よし。なら、急いでくれ。時間がかかるようなら任務を破棄して構わん」
「かなり深刻みたいね」
「デヴァたちから救援要請があった。問題は敵よりもそこにある"もの”だ」
「核ミサイル」
「そうだ。こちらからも増援部隊を出すが、拠点を攻撃される恐れもある。全軍は動かせん」
「了解。距離もこちらからの方が近いわね」
「頼んだぞ」
「取り込み中悪いけど、デートのお誘いよ。その二機はもらっていくわ。わけありのそれは悪いけど、遠慮しとくわ」
「お、おお。持っていけ、持っていけ、実践データは送ってくれよ」
 恐怖から解放され、ほっとしたのだろう。さっきまでの特大の笑顔になっている。
「出来たらね」
「狂うまでの時間はどれくらいなんだ?」
「セイリオス?」
「そうじゃな。乗り続ければ平均して三日か四日というところじゃな」
「なら、その機体は俺がもらう」
「おい!」
「セイリオス!」
「なんじゃと!?」
「グリーフを倒したとしても、ドミネーターを破壊しなけりゃ脅威は無くならない。それには中心部へ誰かが行く必要があるだろ」
「それは……」
「馬鹿者が。どうなっても、わしは知らんぞ!」
「もちろんだ」
「止めても、聞く気はないのよね?」
 セイリオスが無言で頷く。
「いいわ。ジョニー、セイリオス、機体を持ち帰る時間が無い。今の機体はここに置いていくよ」
「了解」
 アーセナルを降り、新しい機体へと乗り換える。
「おいおい、これ」
「やるわね」
「く……くく……」
「セイリオス!?」
 アーセナルからのフィードバック、フェムト粒子を媒介としたエネルギーが相互に行き渡り、機械には無いはずの鼓動や血管を流れる血を感じる。それがいつもとは違う。こちらに同調するのではなく、アーセナルへ俺を同調させようとしている。
「ふざけるな!」
 波が引いていくように圧力が消えていく。
「アーセナル起動シーケンス開始……データリンクテスト……正常。ジェネレータープール……正常。エネルギーリミッター解除。電磁装甲稼働率……正常値で稼働中。武器安全装置確認。すべて正常に稼働中。起動します」
 スーツの模様が赤く光り、三機のフェムト光が輝く。
「大丈夫だ。いける」
「おいおい心配させんなよ!」
「まったく、あんたって奴は」
「すまん」
「準備はいいわね?」
「こっちはOKだ」
「装備を直ぐに済ませる」
「了解。カーナ、この三機の識別ネームはあるのよね?」
「もちろんじゃ。<クラミツハ><アメノハバヤ>そしてそいつは、かつてはムラマサと呼ばれておったが、今は味方も敵も喰らいつくし輝く者<アマツミ>それがそいつの名じゃ」
「輝く者か……」


――――つづく

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